AIでSEの仕事は減るのか?現場の実体験と雇用予測、AI株への備え

AIでSEの仕事は減るのか?現場の実体験と雇用予測、AI株への備え

目次

 AIが急速に賢くなるにつれて、「人間の仕事はいずれ置き換えられる」という話を、毎日のように目にするようになりました。システムエンジニアとして働く私にとっても、他人事ではありません。コードを書く、調べる、設計をまとめる。AIが得意になってきた作業は、まさに自分の仕事の中心にあるからです。

 そこでこの記事では、主要な機関の予測を並べて「雇用は実際どうなりそうか」を整理し、そのうえで「失職の不安に対して、AI株をどう持つか」まで考えてみます。

 この記事は、AI(Claude)と対話しながら、資料の調査や整理を一緒に進めて書きました。

 なお、将来の雇用も株価も、誰にも断定できません。この記事で「確認できた事実」と「私の推測」は分けて書くようにしました。

この記事の流れと結論の図。雇用予想、AI株、土台の3つに分けて整理
この記事の流れと結論

雇用予想:主要な予測を並べて読む

 「AIで何割の仕事がなくなる」といった数字は、出どころによって意味がまったく違います。まず、よく引用される予測を表にまとめます。

出典 時期 内容 読むときの注意
世界経済フォーラム(WEF)「Future of Jobs Report 2025」 2025年1月 2030年までに約1億7,000万件の雇用が新しく生まれ、約9,200万件が置き換えられる。差し引きで約7,800万件の純増 1,000社超の大手雇用主(従業員1,400万人超)への調査。雇用主の見通しを集計したもので、AI単独の効果ではない
IMF(国際通貨基金)「AI Will Transform the Global Economy」 2024年1月 世界の雇用の約40%がAIの影響を受ける。先進国では約60% 「影響を受ける」は「なくなる」ではない。先進国では、影響を受ける仕事の約半分は生産性向上の恩恵を受けうる一方、残りは悪影響が出る可能性があるとされる
スタンフォード大デジタル経済研究所「Canaries in the Coal Mine」 2025年8月公表、2026年8月12日改訂 AIの影響を受けやすい職種の22〜25歳の雇用水準が、AIの影響を受けにくい職種と同じペースで推移した場合に比べて19%低い(2026年6月までのデータ) 米国のデータ。雇用の実数が19%減ったという意味ではない。著者自身が「因果効果の推定ではなく、初期の記述的な指標」と位置づけている
リクルートワークス研究所「未来予測2040」 2023年3月 対策をとらない場合、働き手は2030年に341万人、2040年に1,100万人不足 人口減少による供給不足の試算で、AIによる雇用代替の予測ではない

世界の予測は「失う」と「生まれる」が同時に出てくる

 WEFの予測は、一見すると楽観的です。置き換えられる雇用より、生まれる雇用のほうが多いからです。ただ、これは雇用主の見通しを集計した2030年までの予測で、AI単独による雇用の増減を推計したものではありません。人口動態や経済情勢、環境関連の変化なども含めた複数の要因が反映されています。また、「失う人」と「新しい仕事に就く人」が同じ人とは限らない、という点も数字には表れません。

 WEFの報告書では、仕事で必要なスキルの約40%が2030年までに変わるとも見込まれています。つまり、雇用の総数が増えても、個人の目線では「今のスキルのまま同じ仕事を続けられるか」が問われるということです。

WEFの2030年までの雇用予測を示す棒グラフ。新規約1億7,000万件、置き換え約9,200万件、純増約7,800万件
WEFの2030年までの雇用予測(雇用主の見通し)

 IMFの数字も同じ読み方になります。「約40%の雇用が影響を受ける」と聞くと身構えてしまいますが、IMFは先進国について、影響を受ける仕事の約半分は、むしろ生産性が上がって恩恵を受けうると整理しています(残りは、労働需要や賃金、採用に悪影響が出る可能性があるとしています)。ここは数字だけを見て怖がりすぎないほうがよいところです。

IMFの推計の図。世界の雇用の約40%、先進国の約60%がAIの影響を受けるが、先進国ではその約半分は恩恵を受けうる
「影響を受ける」と「仕事がなくなる」は別

すでに起きているのは「若手の採用が減る」変化かもしれない

 私がいちばん気になったのは、スタンフォード大の研究です。2026年8月12日に改訂された版は、米国の給与データ(ADP)を2026年6月まで分析し、AIの影響を受けやすい職種で働く22〜25歳の雇用水準が、AIの影響を受けにくい職種と同じペースで推移していた場合に比べて19%低いと報告しています。これは「雇用の実数が19%減った」という意味ではありません。経験の豊富な労働者には同様の差は見られず、2025年8月の初回公表以降、差は拡大してきたとされています。

 ただし、著者たちはこの結果を「因果効果の推定ではなく、初期の記述的な指標」と位置づけています。教育水準を考慮すると差が縮まることや、生成AIの登場以前から見られた傾向もあることにも触れています。また、これは米国のデータで、そのまま日本に当てはまるとは限りません。

 それでも、「ベテランの仕事が突然なくなる」というより「経験の浅い人が最初に入る入口が細くなる」という形で影響が出始めている、という見方は、一つの有力な読み方だと思います。

日本の場合:人手不足とAI導入の遅れは、猶予になるか

 日本はAIの導入が遅れています。一方で、人手不足という別の流れもあります。

AI導入の遅れ

 総務省の情報通信白書(令和7年版、2025年7月公表)では、次のようになっています(ITmedia報道による)。

項目 日本 米国 中国 ドイツ
個人の生成AI利用経験 26.7% 68.8% 81.2% 59.2%
企業のAI活用方針の策定 約5割 約9割 約9割 約9割

 2026年7月公表の白書では、業務で生成AIを「少なくとも1つ」使う日本企業は86.4%まで上がったものの、比較した4か国では最下位だったと報じられています(二次情報のため、白書の原文では未確認です)。

人手不足

  • リクルートワークス研究所の試算(2023年3月):対策をとらない場合、働き手が2030年に341万人、2040年に1,100万人不足
  • 経済産業省の試算(2019年):IT人材が2030年に最大約79万人不足。AI関連人材の分析も含むが、現在の生成AIの普及を踏まえた最新の予測ではない

では、猶予になるのか

 私は「猶予はあっても、安心はできない」と考えています(ここは私の推測を含みます)。

  • 導入の遅れは、影響が出る時期を遅らせるだけ
  • 人手不足は、AI導入を後押しすることもある(私の職場は、新規採用に苦戦していた)
  • 日本は解雇が難しいため、影響は「解雇」より「採用の停止」「退職者の補充なし」として出やすい
  • 平均が遅れていても、先に進んでいる会社ではすでに起きている

私の現場で起きていること

 ここで、統計ではなく私自身の経験を書いておきます。私はシステムエンジニアで、会社では開発責任者をしています。あくまで1社での経験で、他の会社にそのまま当てはまるとは限りません。

 AIが台頭する前は、社内の開発リソースだけでは足りず、オフショア開発・業務委託・新規採用で人手を補っていました。以前は「人が足りなくて困る」現場でした。それが今は、「人を増やさずにAIで回す」現場に変わっています。変化は次の図のとおりです。

私の職場で起きている変化。オフショア開発(ベトナム)は停止、業務委託契約はほぼ終了、新規採用は停止、エンジニアが退職しても補充せずAIで代替している
私の職場で起きている変化(1社での経験)

 先ほどのスタンフォード大の研究が示す「経験の浅い人の入口が細くなる」という変化は、私の職場でも、採用の停止という形で起きています。

私の予想と、AI(Claude)の留保

 この流れは、これからも続くと私は予想しています。その予想を、AI(Claude)に聞いてみました。論点ごとに、私の見方とClaudeの見方を並べたのが次の図です。

私の予想とAI(Claude)の見方の比較表。流れが続くか、若手が育たない問題、AIの使い方、業務・設計・開発・運用のワンオペ化、の4論点で大筋で一致した点と、見方が少し違う点を整理
私の予想と、Claudeの見方(大筋で一致。違いは「確実」と言い切るかどうかだけ)

 同意できたのは、「若手が育たない」問題と、「AIの使い方だけでは差が続かない」という点です。私は、AIの進化により 業務・設計・開発・運用が一人でまかなえる「ワンオペ化」が進むと考えています。Claudeも、この方向は十分ありうると見ています。「この流れが続く」という点も、Claudeは続く可能性が高いと見ています。違いは、「確実」とまで言い切るかどうかだけです。Claudeは、速さや程度は不確実で、1社の視点には偏りもありうると指摘しています。また、ワンオペ化のほか、少人数のチームでAIを活用する形に再編される可能性もあり、どちらの場合も、何を命令するかの判断と結果への責任を担う人は残りやすいが、それがSEとは限らない、とも述べています。

 もうひとつ、図の下段にある指摘が大事だと思います。「仕事が残る」ことと「十分な人数が残る」ことは別の話で、必要な人数や待遇が下がる可能性は十分にある、という点です。

 大筋で見方が一致している以上、この流れを前提に備えておく、という考え方が大切になります。

SEの仕事はどう変わりそうか(ここは私の推測です)

 ここからは、上の資料と自分の現場の経験をふまえた推測です。確定した予測ではありません。

  • コードを書くだけの作業は、すでにAIが肩代わりしている
  • SEが間に立って要件を聞き出す役割は小さくなり、業務をしている人が、AIとともに設計・開発・運用をするようになるかもしれない
  • 一方で、責任を持って判断する、既存システムの事情を理解する、といった仕事は残りやすいと考えられる
  • 業務や運用をまかなう社員も、AIによる効率化で削減され、少人数で回す「ワンオペ化」が進む未来が見える
  • 下流工程の仕事ほど、早く人数が絞られるかもしれない
  • 経験の浅い人の「最初の仕事」が減ると、育つ機会そのものが減る懸念がある

 私が考える「ワンオペ化」を、業務・設計・開発・運用の流れで図にすると、次のようになります。

ワンオペ化のイメージ。これまでは業務・設計・開発・運用を別々の担当者が受け渡し(設計・開発はSEが担当)していたが、AIが進むと一人とAIが全工程をまとめて担う(筆者の予想)
ワンオペ化のイメージ(筆者の予想)

 ひとことで言えば、「SEという職業がなくなる」かどうかはともかく、「SEが業務側と開発側の間に立つ」という役割は小さくなり、業務をしている人がAIとともに作る形に近づく可能性が高いのではないか、というのが今の私の見立てです。そのため、SEの役割は変わり、開発の技術だけでなく、より業務側にシフトする必要があると考えています。

SEの仕事の変化の見立て。AIが肩代わりしやすい仕事(要件の聞き取りを含む)と、人に残りやすい仕事(業務を知る人が設計・開発・運用をする等)の比較(筆者の推測)
SEの仕事の変化の見立て(筆者の推測)

投資戦略:失職の不安と、AI株をどう結びつけるか

 ここまでの雇用の話を踏まえて、資産面では何を備えるかを考えます。雇用の見通しが不確実だからこそ、お金の面でも、どちらに転んでも困らない形をつくっておきたいところです。

なぜ「AI株」を持つことに意味があるのか

 私の収入の源は、「働いて得る給料」です。AIが普及して経済の仕組みが変わるなら、その恩恵は、AIを提供する企業やその周辺の企業の利益として現れる可能性があります。AI関連企業への投資は、そうした変化に資産運用を通じて関わる選択肢の一つです。これが、AI株を検討する理由です。

 ただし、AIによる雇用の変化とAI関連株の値動きが逆方向になる保証はありません。たとえばAIバブルが崩れて株価が大きく下がる局面では、景気も悪くなって、失職と株価下落が同時に起こる可能性もあります。そのため、AI株は失職への保険とみなすのではなく、生活防衛資金や分散投資とは別に、損失を受け入れられる範囲の投資として考える必要があります。

AI株の現状:業績は強いが、期待も高い

 AI株の現状を、「強い面」と「慎重な見方」に分けて整理します。

強い面①:エヌビディアの業績

 2026年8月26日に発表された、2027年1月期第2四半期(5〜7月)の決算です。

  • 売上高962億ドル(前年同期比106%増)
  • データセンター部門890億ドル
  • 次の四半期の売上高見通し1,080億ドル(中国向けのデータセンター用演算チップの売上は含まない)

強い面②:大手の設備投資も巨額

 2026年の設備投資の見通しは、次のように報じられています。

会社 2026年の設備投資の見通し 補足
アマゾン 約2,200億ドル 2026年2月時点は約2,000億ドル。7月下旬の決算後に引き上げたとCNBCなどが報道(私は決算資料で直接確認できていません)
アルファベット 1,950億〜2,050億ドル 7月下旬の決算で見通しを改めたと報道
メタ 1,300億〜1,450億ドル 同上
マイクロソフト (数値は載せません) 会計年度の違いや、データセンター等の減価償却期間の見直しの影響で、他社と同じ定義では比べにくい

 報道の集計では、4社の2026年の設備投資は合計で7,000億ドル規模とされます。ただし、集計方法が各社で異なるため、厳密に同じ基準の比較ではありません。また、いずれも会社の見通し(ガイダンス)や報道による推計で、実際の支出額ではありません。

慎重な見方

  • 設備投資の収益化の道筋は、依然として不透明という指摘があります。T. Rowe Priceのジャスティン・トムソン氏による2025年12月のレポート「Hyperscalers: Is the AI boom dot-com redux?」(日本語版)は、大手テック企業が拡張資金の調達を借入に頼りつつあるとも指摘しています
  • エヌビディア自身も、大手顧客が自社設計のチップに移る動きという競争リスクにさらされています
  • 業績が良くても、株価がすでに期待を織り込んでいれば、下がることがあります。2026年2月には、エヌビディアの決算が市場予想を上回ったにもかかわらず、AI投資の収益性などへの懸念から株価が下落した場面がありました

AI株を見るときの4つの視点

 「AIが成長すること」と「AI株で利益を得られること」は、別の話です。AI株を検討するなら、次の視点で確認してみるとよいと思います。売買の目安ではなく、確認するための視点です。

  • AI関連の売上の伸びと、設備投資の伸びは、釣り合っているか
  • 設備投資が、将来の利益として回収できる見通しか
  • 株価に、どれだけ高い成長期待が織り込まれているか
  • AI投資が減速したとき、影響を受けやすいのは、どの層か(次の表を参照)

AI株の「3つの層」で考える

 「AI株」とひと口に言っても、中身はかなり違います。層ごとに、リスクの種類も違うと考えると整理しやすくなります。

層 例 特徴 主なリスク
半導体・製造装置 AI向け半導体、製造装置、メモリ AI投資の拡大がそのまま売上になりやすい 投資が減速すると業績の落ち込みが大きい。顧客の自社チップ化
クラウド・プラットフォーム 大手クラウド、AIモデルを提供する大手テック 事業の柱が複数あり、安定感がある 巨額の設備投資が回収できるか
電力・データセンター・周辺 電力設備、冷却、ネットワーク機器など AIが使われるほど必要になる「インフラ」 規制、電力不足、設備投資の波に左右される

 この表は分類の例であり、個別銘柄をすすめるものではありません。どの層も、AIの成長期待が崩れたときには同じ方向に動きやすい点は共通しています。

具体的な組み立て方の一例

 私が考える進め方を、順番に書きます。

  1. 生活防衛資金を先に確保する。失職の不安があるなら、株より前に、生活費の半年〜1年分程度を現金で持っておく(目安であり、家族構成などで変わります)
  2. 土台は、全世界株式やS&P500などの分散型のインデックス。これらにはすでに、AI関連の大手企業が大きな比率で組み入れられている
  3. AI株を足すなら、全体の1〜2割程度までの「サテライト」にする。この比率はあくまで一例で、許容できる損失から逆算して決める
  4. 一度に買わず、時期を分ける。積立にすれば、高値づかみのリスクを多少やわらげられる
  5. 売るルールを先に決めておく。「失職したら取り崩す」のか、「一定の比率を超えたら調整する」のか、買う前に決めておく

 逆に、避けたいことも書いておきます。失職の不安から焦って全額をAI株に寄せること、信用取引やレバレッジ型の商品でリターンを狙うこと、話題だけで個別株を買うことです。不安が大きいときほど、値動きの激しいものに賭けたくなりますが、その気持ちが一番危ないと思います。

投資の組み立ての階層図。下から生活防衛資金、分散型インデックス、AI関連株の順
投資の組み立て方(比率は一例)

投資より先に、自分への投資

 お金の面で一番大きな資産は、じつは自分が将来稼ぐ力です。株の運用で10%増やすよりも、スキルを磨いて収入を上げるほうが、効果が大きい場合は少なくありません。

 具体的には、AIを「使う側」に回ることだと考えています。AIが書いたコードをレビューして責任を持てるか。業務の課題を整理して、AIに任せる範囲を設計できるか。こうした力は、AIが進化するほど価値が上がる可能性があります。AI株を持つことと、AIを使いこなす側に立つことは、両方やって意味が出てくると思います。

 もうひとつは、業務側へのシフトです。SEの役割が変わるなら、システムの作り方だけでなく、業務そのものを理解し、業務の側から課題を解決できる力が問われるようになると私は考えています。

まとめ

 雇用の予測と、自分の現場の変化を重ねて見えたのは、「仕事が一気に消える」ことより、「仕事の中身が変わり、経験の浅い人の入口が細くなる」可能性のほうが現実的に見える、ということです。ただし、今ある資料からの読み方で、将来を断定するものではありません。

 投資のほうは、AI株が失職リスクへの有効な備えになるとは限りません。生活防衛資金、分散投資、自分のスキルへの投資を土台に、AI関連株は、損失を受け入れられる範囲で検討する選択肢の一つとして位置づける、というのが現時点での私の整理です。

更新履歴

  • 2026年10月11日:初版公開