【2026年10月】相次ぐ情報漏洩、上場企業の株価はどう動いた?直近の事例まとめ

【2026年10月】相次ぐ情報漏洩、上場企業の株価はどう動いた?直近の事例まとめ

目次

 2026年9月中旬以降、上場企業やその子会社で、個人情報の漏えいが連日のように発表されています。気になるのは、そのたびに株価がどれだけ動いたのか、という点です。

 この記事では、9月中旬から10月20日ごろまでに公表された主な事例と、発表前後の株価の動きを、報道と適時開示で確認できた範囲でまとめます(2026年10月21日時点)。

 調べた範囲の結論を先に書くと、漏えいの公表後に株価が下がった企業は複数ありました。ただし、確認できた株価は当日の途中経過や翌営業日の値など比較時点が異なり、下落率を横並びで比べられるデータではありません。漏えいだけが下落の原因だったとも断定できません。業績への影響がはっきり表れたのは、漏えいに加えて受注・出荷が止まったアスクルのようなケースです。

100万件超の漏えいは、もう2025年の年間件数を超えた

 東京商工リサーチ(TSR)が2026年10月7日に公表した集計によると、上場企業とその子会社が公表した個人情報の漏えい・紛失事故のうち、100万件以上の事例は2026年10月5日時点で10件でした。2025年の年間6件をすでに上回っています。

 2026年の100万件超には、KDDI(1,223万件のメールアドレス)、物語コーポレーション(1,078万件)、タイムズモビリティ(約660万件)、イエローハット(4月と8月の2件)などが含まれます。

直近の主な事例

 公表日の順に並べました。件数は各社の発表や報道の表記のままで、単位(件・人・アカウント)が混在しているため、単純には比べられません。

公表日 企業・サービス 件数 主な内容
9/15 ムラウチドットコム 771万6,811件(人数とは説明されていない) 7月公表の不正アクセスの調査結果(第二報)。氏名・住所・電話番号のほか、一部の顧客はメール・生年月日・性別。カード情報とパスワードは対象外としている
9/18 ニチレイ 5万3,866件(配送先顧客3,308件、取引先の役職員6,849件、従業員等4万3,709件) 7/13のサイバー攻撃による(第7報)。給与・賞与など人事情報も含む。カード情報は含まない
9/25(第1報) パーク24(タイムズカー) 約660万アカウント(9/28の第2報) Webシステムへの不正アクセス。9/29の第3報で、運転免許証画像など本人確認書類の情報が漏えいしたのは約160万アカウントと公表
10/5 物語コーポレーション(焼肉きんぐ) 1,078万8,963件 会員番号・氏名・メール・電話番号。パスワードやカード情報は対象外
10/5 大和証券グループ本社 約11万人(個人を特定できない問い合わせ情報を含めると約22万件) 氏名・メールアドレス・口座番号などが漏えいした恐れ。問い合わせ管理を委託するスカラコミュニケーションズのサーバーへの不正アクセス(10/2〜10/3)で、大和証券本体のシステムへの不正アクセスは確認されていないとしている
10/6 ミスターマックス・ホールディングス 最大173万5,154人(10/3時点の登録会員) 会員ID・氏名・メール・電話番号。住所・生年月日・カード情報・パスワード・購入履歴は流出していないとしている
10/8 第一興商 約872万件(顧客約863万件、従業員約9万件) 委託先(日本コロムビアグループ)の従業員PCのマルウェア感染で漏えいした恐れ。氏名(登録名)・性別・生年月日・メール・電話番号。パスワードは含まない
10/9 ブックオフグループHD 638万3,279人(10/13の第2報。会員データ数は642万7,735件) 会員情報。パスワードはハッシュ値。退会会員21万2,371人を含む。10/16の訂正は、漏えいした可能性のある項目に「職業」「ニックネーム」を追加したもので、人数・件数は変わらない
10/9 ディップ(バイトル) 最大388万5,771件(漏えいした可能性のある件数) メールアドレス。Webサイトの一部機能の仕様の不備が悪用された(氏名・電話番号・パスワード・カード情報の流出は確認されていない)
10/9 JR東日本・ビューカード JR東日本は最大約206万件(えきねっと約167万件、大人の休日倶楽部約39万件の延べ数)、ビューカードは約403万件 IDCフロンティアのクラウドへの攻撃で、メール配信の外部サービスから漏えいした恐れ。メールアドレスが中心で、大人の休日倶楽部には会員番号・生年月日・カード有効期限も含む
10/15 ソースネクスト 最大2,251万9,960件 パスワードを含む会員情報
10/16 ヤマトホールディングス(クロネコ代金後払いサービス) 第4報の内訳は、利用者約526万件、配送先約5万件、加盟店約4,100件 氏名・住所・電話番号など。クレジットカード情報とパスワードは含まれないとしている
10/16 ファンケル・アテニア 計83万4,947件(ファンケル39万3,785件、アテニア44万1,162件) ECサイトへの不正アクセス(10/3〜10/10)。氏名・住所・電話番号・生年月日など。メインのパスワードとカード情報は対象外としている
10/16 岩井コスモ証券・トレードワークス 4,611人 委託先トレードワークスのシステムの設定不備を悪用した不正アクセス。氏名・メールアドレスなど
10/19 パピレス(Renta!) 未公表(漏えいが確定した事例ではなく、不正アクセスの可能性の段階。漏えいの有無は調査中) 10/18にサーバーへの不正アクセスの可能性を把握してサービスを停止。当初は「臨時メンテナンス」と説明し、10/19の適時開示で不正アクセスの可能性を公表。再開時期は未定
10/20 チェンジHD(ふるさとチョイス) 445万4,097件(現時点で確認された会員情報の件数。調査で変わる可能性あり) 10/17の不正アクセス。氏名・メール・住所・電話番号・ハッシュ化されたパスワード・寄附控除試算額。サービスは10/19に停止し、再開時期は未定

 ヤマトは、時事通信が3区分の合計にあたる531万件と報じています。一方、日本経済新聞は183万件と報じており、この数字が何を数えたものかは確認できませんでした。報道によって異なる数字が示されているため、単純には比べられません。このほかに、ローソン(215万人)などの発表もありました。

株価はどう動いたか

 発表前後の株価の動きが報道で確認できたのは、次の8社です。株価は報道の時点の値で、同じ日の相場全体の動きは考慮していません。

企業(コード) 漏えいの公表 株価の動き
大和証券グループ本社(8601) 10/5 正午ごろ 10/5 13:45時点で1,725.5円、前週末比25.5円(1.45%)安
物語コーポレーション(3097) 10/5 取引終了後 10/6に大幅反落し5,300円(250円安。前日終値5,550円から計算すると約4.5%安)
パーク24(4666) 9/28(第2報) 後場に下げ幅を拡大。10/1に集団訴訟の参加意向が2,000人超と報じられ、10/2前場の終値は1,773円(前日終値1,844.5円から3.88%安)。6/4以来、約4カ月ぶりの安値
ブックオフグループHD(9278) 10/9 朝 同日10:34時点で2,717円、前日比0.58%安
ソースネクスト(4344) 10/15 10/16に年初来安値を更新。100円台前半で、前日比1〜2円安
トレードワークス(3997) 10/16 10/19に「大幅反落」と報じられた
パピレス(3641) 10/19(適時開示) 10/19に反落。午前11時30分ごろは950円(42円安)で、10/20朝配信の記事では952円(40円安。前日終値992円から計算すると約4.0%安)。10/9以来5営業日ぶりに1,000円を下回った
チェンジHD(3962) 10/19(サービス停止)、10/20(件数公表) 10/20は続落。14時20分ごろに前日比40円(3.86%)安の996円、みんかぶによると15時30分時点で985円(51円、4.92%安)

 ここに載せていない企業(ミスターマックス、第一興商、ヤマト、ディップ、JR東日本など)は、今回の調査で株価への言及が確認できませんでした。動かなかったという意味ではありません。

 パーク24については、集団訴訟の参加意向が2,000人超と伝えられた後に、これを嫌気した売りが出たとみられる、とITmedia NEWSが報じています。株価に影響する材料は、発表のあとに続くこともあるようです。

影響が大きいのは、業務が止まったケース

 ここまでの株価の動きとは桁が違ったのが、ランサムウェアで受注や出荷が止まった企業です。

 アスクルは2025年10月19日にランサムウェアに感染し、ASKULやLOHACOのサービスが一時停止しました。2026年1月28日の発表では、システム障害の対応費用として2026年5月期第2四半期に特別損失52億1,600万円を計上しました(確定前の見積り)。通期の業績予想は取り下げ、2025年11月20日基準の中間配当は無配です。

 株価も、攻撃の発覚後の10月20日に大幅続落し、その後に3年11カ月ぶりの安値まで下げたと株探が報じています。2026年3月27日の取引終了後には、2026年5月期の営業損益が205億円の赤字になる見通しを発表しました。年間配当は期末の10円のみ(6〜11月期は無配)で、前期から28円の減配という内容で、3月30日の株価は急落しました。その後、7月3日に発表された通期決算では、営業損失は174億円、最終損益は221億円の赤字でした。

 アサヒグループHDも、2025年9月29日のサイバー攻撃で受注・出荷が止まり、2025年1〜9月期の決算開示を延期しました。この決算は2026年3月10日に発表され、純利益は1,028億円(前年同期比26.2%減)でした。会社は、システム障害の売上収益への影響は軽微で、事業利益への影響は約1%の減益要因と説明したと報じられています。純利益の減少には、日本経済新聞が挙げる約250億円の減損損失や金利上昇による金融収支の悪化など、攻撃以外の要因も含まれます。

 2社とも「漏えいした件数」だけでは影響を測れません。システムが止まった期間、売上への影響、決算の遅れまで含めて見る必要があります。

 直近では、ふるさとチョイスとRenta!も、サービスを止めたまま調査を続けています。トラストバンク(チェンジHDの連結子会社)は10月19日にふるさとチョイスの関連サービスを停止し、10月20日に会員情報445万件余りの流出を公表しました。パピレスはRenta!を10月18日に止め、10月20日時点で再開時期は未定、業績への影響額は「算定できていない」としています。どちらも決算にはまだ表れておらず、影響が大きくなるかどうかは、停止の長さや今後の調査結果しだいです。

見るときのポイント

 発表を見たとき、確認しておきたいのは次の4点です。

  • 受注や出荷、サービスが止まっているか(止まっていれば、業績への影響が大きくなりやすい)
  • 漏えいした情報の種類(パスワードやカード情報を含むか)
  • 集団訴訟や行政対応など、発表後の動きがあるか
  • 件数が続報で増えていないか(ブックオフのように、第2報で件数が確定した例もある)

まとめ

 今回確認した事例では、漏えいの公表後に株価が下がった企業がありました。ただし、比較時点が異なる値の寄せ集めで、漏えいだけが原因とは言い切れません。業績への影響がはっきり表れたのは、件数の多さより、業務停止を伴ったアスクルのようなケースでした。

 ここで紹介した株価は報道時点の値で、件数も続報で変わる可能性があります。正確な数字は各社の適時開示で確認してください。この記事は投資の助言ではありません。

更新履歴

  • 2026年10月21日:ふるさとチョイス(チェンジHD)とRenta!(パピレス)の事例を追加
  • 2026年10月21日:初版公開