【2026年10月】証券口座を乗っ取られたら、どこまで補償される?主要証券会社の補償方針を比較

【2026年10月】証券口座を乗っ取られたら、どこまで補償される?主要証券会社の補償方針を比較

目次

 証券口座がフィッシングなどで乗っ取られ、勝手に株を売買されたとき、損失はどこまで戻ってくるのでしょうか。2025年に被害が相次いで以来、各社が補償方針を公表しています。

 この記事では、各社の公式発表をもとに、補償の内容、対象期間の区切りが公表されている場合のその日付、補償の条件を整理します(2026年10月23日時点)。

 先に結論を書くと、補償方針は、原状回復を基本とするもの、被害額の50%を基本に金銭補償するもの、個別事情に応じて補償の可否や内容を判断するものなど、会社によって異なります。50%補償などの具体的な基準を公表している会社もあれば、補償割合を明示せず、原状回復を含めて個別に対応する会社もあります。ただし補償方針は会社ごとに異なり、認証の必須化などを境に扱いが変わる会社もあります。認証が必須になったことだけで補償の可否や金額が一律に決まるわけではなく、被害の発生時期、認証の設定状況、ID・パスワードの管理状況などが判断材料になります。

前提:10社の申し合わせ(2025年5月2日)

 日本証券業協会は2025年5月2日、証券会社10社の申し合わせを公表しました。野村證券、大和証券、SMBC日興証券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券、三菱UFJ eスマート証券です。

 内容は、第三者が不正に顧客の資産を使って売買した被害について、各社の約款の定めにかかわらず一定の補償を行うというものです。ただし補償額は一律ではなく、顧客のID・パスワードの管理状況や、会社側の対策・注意喚起などを踏まえて個別に決めるとされています(SBI証券の公式ページによる)。

各社の補償方針

 補償の型で分けて並べました。「区切り」は、公式発表で対象期間や取り扱いの変更時点が示されている場合に、その日付または出来事を記載しています。明確な区切りが確認できない場合は「記載なし」としています。

証券会社 補償の型 区切り 公式発表で確認できる条件
野村證券 原状回復(最大で不正取引前の状態へ) 2025年6月28日(ワンタイムパスワード必須化の前日)まで/6月29日〜パスキー認証導入まで/2026年6月27日からパスキー認証必須化 2025年1月〜6月28日の被害は個別事情に応じて対応。6月29日からパスキー導入までの被害も2025年5月2日発表の方針が適用され、申し出た顧客へ個別に連絡。ID・パスワードの管理状況などで減額・不補償もあり。2026年6月27日からパスキー認証が必須になったが、その後の補償方針は記載なし
大和証券 原状回復(過失がない場合は全額) 2025年1月〜7月5日 7月6日以降は、ID・パスワードの管理やセキュリティ設定によっては補償できない場合あり
SMBC日興証券 原状回復(必須化以前の被害は実施済み) 二要素認証の必須化(2025年6月上旬から順次実施)以前 以降は個別事情に応じて補償の可否・内容を検討。管理状況・設定によっては補償できない場合あり
みずほ証券 原状回復を含む補償(個別事情による) 補償の対象期間の区切りは記載なし(2026年2月9日はパスキー必須化の日。別のお知らせによる) パスキー等のセキュリティ設定や個別事情によっては補償対象外
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 原状回復を含め個別に対応 記載なし 割合・期間・対象外の条件は公式ページに記載なし
三菱UFJ eスマート証券 原状回復を含め個別に対応 記載なし 割合・期間・対象外の条件は公式ページに記載なし
SBI証券 2025年10月25日までの被害は原則50%を金銭補償。10月26日以降は個別検証 2025年10月26日(パスキー導入の翌日) 10月25日までの被害:手数料等は100%補償、見舞金は一律1万円。10月26日以降の被害:ID・パスワードの管理やセキュリティ機能の利用状況などに応じ、補償の有無・内容を個別に検証
楽天証券 今回の不正アクセス被害について、被害額の50%を基本に金銭補償 対象事案の終期について、公式発表に明確な記載なし 手数料は返金、見舞金は一律1万円。利用状況を個別に確認したうえで最終決定
松井証券 2025年9月28日までは一律1/2を金銭補償 2025年9月29日 2025年9月28日までの被害は、一律2分の1を金銭補償し、不正取引により生じた手数料を全額返金(7月25日の発表)。2025年9月29日以降の被害は顧客ごとの個別判断
マネックス証券 個別の事情に応じて補償 2025年10月31日(パスキー認証の提供開始) 提供開始以降の被害は約款等に従って対応。減額や補償不可もあり
GMOクリック証券 2025年10月8日のログイン追加認証必須化前に確認された不正取引は、特例として原状回復の観点から全額補償。必須化後は調査結果に基づき一定の補償 2025年10月8日(ログイン追加認証の必須化) 必須化後は、ID・パスワードの管理状況や取引時の状況など、GMOクリック証券による調査結果を踏まえて補償内容を判断。別途、2025年9月22日・26日の公式発表では、追加認証未設定、身に覚えのない追加認証を拒否しなかった場合、追加認証方法をメールにしていた場合に、補償対象外または補償が限定的となる可能性があると案内

 GMOクリック証券は10社の申し合わせには含まれていません。

原状回復と50%補償は何が違うのか

 原状回復は、不正に売られた株を同じ銘柄・同じ株数で口座に戻すなど、不正取引の前の状態に戻すことを目指す対応です。ただし、実際の補償内容は会社の方針や個別事情によって異なり、必ず全額が補償されるとは限りません。

 楽天証券は、今回の不正アクセス被害について、被害額の50%を基本として金銭補償する方針を公表しています。SBI証券も、2025年10月25日までの被害については原則50%の金銭補償を基本としていますが、2025年10月26日以降の被害は、ID・パスワードの管理状況やセキュリティ機能の利用状況などに応じて、補償の有無・内容を個別に検証する方針です。被害額の算定方法も会社ごとに異なります。

  • SBI証券(2025年10月25日までの被害):不正な買い付けと売り付けの約定代金の差額、売り付けのない銘柄は基準日の評価額。売買手数料・信用金利などは100%補償。配当や株主優待の権利喪失などは対象外
  • 楽天証券:不正に買い付けられた有価証券の売却損と、保有している分の評価損の合計。もともと持っていた株を不正に売られた分は被害額に入らない(見舞金と手数料の返金の対象)

 もともと保有していた有価証券を不正に売却された被害だけの場合、SBI証券の2025年10月25日までの補償方針では、対象となる各種費用と一律1万円の見舞金が補償内容となります。楽天証券も、もともと保有していた有価証券の不正売却については被害額の算定対象外とする一方、お見舞金の対象としています。各社の補償方針や対象条件は異なるため、実際の補償内容は最新の公式発表で確認してください。

 SBI証券は、2025年10月25日までの被害について50%補償を基本とした理由として、認証情報が同社から漏れた事実は確認されず、約款の免責事項に該当すると判断した一方、多要素認証などを顧客に必須化していなかったことを挙げています。同社は原状回復や全額補償も検討したうえで、この方針を決定したと説明しています。2025年10月26日以降の被害については、補償の有無・内容を個別に検証する方針です。

認証強化後の被害は、扱いが変わる会社がある

 認証の必須化後の扱いは会社ごとに違います。公式発表で確認できたのは次のとおりです。

  • SBI証券:2025年10月26日以降の被害は、ID・パスワードの管理や、提供しているセキュリティ機能の利用状況に応じて、補償の有無と内容を個別に検証する
  • 松井証券:2025年9月29日以降の被害は、顧客ごとの個別事情に応じて補償の可否・内容を判断する。別の2025年4月28日付のお知らせ(5月12日更新、電話番号認証の必須化)では、電話番号認証が未設定の状態で不正アクセスによる損失が出た場合は、補償を行わない可能性があるとしている
  • GMOクリック証券:2025年10月8日のログイン追加認証必須化前に確認された不正取引について、特例として原状回復の観点から全額補償する方針を公表しています。必須化後は、ID・パスワードの管理状況や取引時の状況などの調査結果を踏まえ、一定の補償を行う方針です(GMOフィナンシャルホールディングスの決算説明資料による)。これとは別に、2025年9月22日・26日の公式発表では、追加認証の未設定、身に覚えのない追加認証を拒否しなかった場合、追加認証方法をメールにしていた場合は、補償対象外または補償が限定的となる可能性があると案内しています
  • みずほ証券:パスキー等の設定状況によっては補償の対象外
  • マネックス証券:2025年10月31日のパスキー認証提供開始以降の被害は、約款等に従って対応する

 つまり、今から被害に遭った場合は、「会社の方針だから半額(または全額)戻る」とは言えなくなっています。認証の設定をしていても補償が保証されるわけではないため、被害に遭ったときは各社の最新の公式方針を確認してください。

2026年10月に出てきた新しい懸念

 楽天証券は2026年10月14日、他社でGoogleやAppleのアカウント情報が盗まれ、証券口座への不正ログインや不正取引が疑われる事案が確認されたと注意喚起しました。クラウドに保存したパスキーやパスワードが悪用される可能性もあるとしています。同社では、この時点で被害は確認されていないとしています。

 偽サイトに情報を入力しなくても、GoogleやAppleのアカウントが破られれば、同じ端末環境から証券口座に入られるおそれがあるという話です。こうした経路の被害が補償でどう扱われるかは、各社の発表では確認できませんでした。

 楽天証券が勧めている対策は次のとおりです。

  • GoogleアカウントとAppleアカウントに二段階認証を設定する
  • 「パスキーの再登録」を促すSMSやメールは詐欺とみなす(同社のセキュリティメールにはリンクを載せていない)
  • 身に覚えのない認証要求は承認しない
  • アカウントに登録されている端末を定期的に確認し、見覚えのないものや使っていないものは削除する

もう一つ気をつけたい「補償を装った詐欺」

 野村證券は「メールにて補償に係るご案内は行っておりません」と明記しています。SBI証券、GMOクリック証券、大和証券も、補償を名乗るフィッシングメールや電話が確認されていると注意喚起しています。補償の案内を受け取った場合は、メールやSMSのリンクからアクセスせず、公式サイトに自分でアクセスするか、取引店などの既知の連絡先に確認してください。

よくある質問

補償金には税金がかかる?

 SBI証券、楽天証券、松井証券、マネックス証券は、今回の不正取引被害に関する補償金について、個人が受け取った場合は所得税が非課税で、確定申告も不要だと案内しています。別の名目の金銭や異なる事情については、同じ取り扱いになるとは限りません。ほかの会社の取り扱いは、各社の発表では確認できませんでした。

証券会社が破綻したときの投資者保護基金で、乗っ取りの損失も戻る?

 日本投資者保護基金は、証券会社が破綻して資産を返せなくなったときの制度で、乗っ取りによる不正取引の補償とは別物です。不正取引の補償は、この記事で見た各社の方針で決まります。

被害に気づいたらまず何をする?

 みずほ証券は、身に覚えのないログインや取引があった場合、パスワードの変更と、取引店・お客さま相談室・コールセンターへの連絡を案内しています。補償の可否は被害状況の確認を経て個別に決まるため、早めに連絡しておくと安心です。

まとめ

  • 補償方針は会社ごとに異なる。原状回復を含めて個別に対応する会社、被害額の50%を基本に金銭補償する会社(SBI証券・松井証券は対象期間が限られる)、個別事情に応じて補償の可否・内容を判断する会社がある。過去に公表された補償方針が現在の被害にもそのまま適用されるとは限らないため、対象期間や条件、最新の公式発表を確認したい
  • 認証の必須化後の補償方針や対象期間は会社によって異なる。個別事情に応じて判断する会社もあり、認証の設定状況やID・パスワードの管理状況が判断材料になる。設定していても補償が保証されるわけではない
  • パスキーなどの認証を設定し、GoogleやAppleのアカウントも守ることが、補償以前の備えになる

更新履歴

  • 2026年10月23日:初版公開