キオクシア株が1日で13%安。原因と今後の展望、割安なのか、買い時はいつかを決算と需給から考える

キオクシア株が1日で13%安。原因と今後の展望、割安なのか、買い時はいつかを決算と需給から考える

目次

 10月13日、キオクシアホールディングス(285A)の株価が1日で13.28%も下がりました。終値は1万5,180円。6月22日の高値(株式分割を調整して3万7,567円)と比べると、およそ6割安い水準です。

 「決算は過去最高益だったのに、なぜ?」「ここまで下がったなら割安なのでは?」と気になっている方も多いはず。この記事では、なぜ下がったのか、今は割安なのか、買うならいつ頃を見ればいいのかを、決算と需給(買いたい人と売りたい人のバランス)から整理してみます。

 将来の株価は誰にも分かりません。この記事では、確認できた事実と私の見立てを分けて書きます。投資をすすめるものではありません。

10月13日に何が起きたか

 3連休明けの東京市場で、キオクシアは前営業日比13.28%安の1万5,180円で取引を終えました。日中は一時14.05%安まで売られ、売買代金は約9,818億円。この日は日経平均も1.82%安の6万7,777円でした。

 6月22日の高値からは約60%の下落です。時価総額で見ると、6月の約60兆円から約25兆円まで縮んだ計算になります(1万5,180円×約16.5億株)。

株価の比較。6月22日高値3万7,567円、7月30日安値1万2,006円、9月30日1万8,095円、10月9日1万7,505円、10月13日1万5,180円(高値比マイナス60%)
株価の推移(株式分割調整後)

下落の背景として考えられる3つの要因

急落の要因の図。引き金とみられるのはCXMT報道、増幅した可能性があるのは信用買いの重さ(信用倍率は10月9日時点で約30倍)、背景はAI関連株への警戒(サムスンの自社株買い結果開示など)。結果は終値1万5,180円で13.28%安
急落の背景として考えられる3つの要因

 株価が下がった理由は売った人それぞれの判断なので、1つに断定はできません。ここでは、報道や公表データから確認できる事実と、私の推測を分けて整理します。

① 引き金とみられる要因:中国CXMTの新製品報道

 香港紙が「中国のメモリ大手CXMT(長鑫存儲技術)が、記憶容量を高めた新製品を開発中」と報じました。12日の米国市場でマイクロンやサンディスクが下がり、その流れが東京にも来た形です。CXMTは、新しいDRAM構造「4F²」を使ったサーバー向けメモリを、2026年末までに出す計画だとされています。

 ただ、ここは落ち着いて見たいところです。

  • CXMTはDRAMが中心で、キオクシアの主力のNANDとは直接の競合ではない。
  • ブルームバーグによると、4F²の技術的な裏付けは示されていない。
  • NANDで直接のライバルになるのは、中国のYMTC(長江存儲)。

 つまり、報道の中身そのものというより、「中国勢が安売り競争を仕掛けてくるかも」という連想で売られた面があると私は見ています。ただし、投資家一人ひとりの売りの理由までは確認できないため、この報道だけが原因とは言い切れません。

② 増幅した可能性:信用買いの重さ

 もう1つは需給です。キオクシアは6月の高値圏で、個人の信用買いが大きく膨らみました(日経)。信用倍率(買い残÷売り残)は、10月8日に約23.9倍、急落前日の10月9日には約29.8倍まで上がっていました(kabutore.biz)。信用買いが多い状態で株価が下がると、含み損を抱えた人の損切りが重なり、下げが大きくなることがあります。ただ、13日に実際どれだけ信用買いの投げが出たかは、現時点では確認できていません。急落前日の信用倍率が高かったので、売りが出やすい状態だった可能性がある、という位置づけです。

 この点は、あとで詳しく見ます。

③ 背景:AI関連株への警戒

 ブロードコムのCEOが「半導体不足より、資金調達のほうが問題になり得る」と話したことや、今年上がってきたAI・メモリ株に利益確定の売りが出やすくなっていることも重しです。

 サムスン電子では、15兆ウォン規模の自社株買いについて、10月12日付で結果が開示されました。当初の取得期限は11月21日でしたが、報道によると実際の取得は10月6日までに終わっています。期限より早く終わったことが需給面で意識された可能性はありますが、キオクシア株への影響を直接示すものではありません。

決算から見る:業績は絶好調、ただし「市況産業」

 最新の決算(2027年3月期の第1四半期、4〜6月。7月31日発表、決算短信)は、数字だけ見るとすごい内容です。

項目 4〜6月期(実績) 7〜9月期(会社見通し)
売上収益 1兆7,671億円 2兆3,900億円
営業利益 1兆2,700億円 1兆8,900億円
親会社帰属利益 8,422億円 1兆2,700億円

 7〜9月期は、上半期予想から4〜6月期の実績を引いた数字です。

 背景はAIサーバー向けの需要で、NANDの販売単価が前の四半期より約7割も上がりました。会社は2027年も需要が供給を上回ると見ています。営業キャッシュフローは8,663億円、設備投資は524億円で、手元資金も一気に増えています。

 ただし、気をつけたい点が2つあります。

  • 市場予想には届かなかった。 4〜6月期の純利益8,421億円は、市場予想(QUICKコンセンサス9,687億円)を下回りました。7〜9月期の純利益見通し1兆2,700億円も、市場予想(1兆3,431億円)に届いていません(日経の報道ベース。予想の集計時点は確認できていません)。「すごく良いけれど、期待ほどではなかった」という受け止めだったわけです。
  • メモリは市況に左右される業界。 キオクシアは2023年3月期・2024年3月期に巨額の営業赤字でした。単価が上がれば利益が一気に膨らみ、下がれば一気に赤字になりやすい業界です。

今は割安なのか

 では、今の株価は割安なのでしょうか。参考として、1万5,180円をもとに私の簡易計算をしてみます。

  • 時価総額:約25兆円(終値1万5,180円×発行済株式数約16.5億株)
  • 2026年4〜9月の親会社帰属利益:会社が公表している上半期(第2四半期累計)の予想で約2.1兆円(4〜6月期の実績8,422億円を含む。決算短信)
  • これを私が単純に2倍した年換算:約4.2兆円(1株あたり約2,570円)→ 時価総額÷年換算利益で約6倍

 ただし、これは会社が出した通期予想に基づくPERではありません。会社の公表値は上半期までで、2倍にしたのは私の仮定です。上半期の利益が下半期も続くと仮定しただけの参考値で、メモリ価格や販売数量が変われば、実際の年間利益は大きく変わる可能性があります。たとえば年間の利益が今の計算の半分になれば、同じ株価でもPERは約12倍になります。ほかの報道では、サムスン電子・SKハイニックス・マイクロンを含め、メモリ大手のPERは6〜7倍前後に収れんしていると指摘されています。

 「PER約6倍だから割安」と言えるでしょうか。私は、割安とも割高とも言い切れないと思います。メモリ株のPERが低いのは、市場が「今の利益はピークで、いずれ減る」と見ているからです。利益が来期以降も続くなら割安、単価が下がれば計算の前提が崩れる、という関係です。

 参考までに、運用会社のファンドマネージャーからは「5〜7年で見れば割安」「下げすぎ」という声も出ています。2026年10月1日の日経記事では、QUICKが集計した証券会社10社のうち8社の目標株価が、6月の高値を上回ると伝えています(対象10社・集計日は記事の公開部分では確認できていません)。ただ、これも「業績予想が高いから」で、予想が外れれば前提が変わる点は同じです。

需給:重いのは「信用買い」と「期限」

信用倍率はどう動いてきたか

信用倍率の推移。7月3日約22.0倍、17日約36.8倍、24日約21.0倍、9月4日約13.3倍、10月2日約16.1倍、8日約23.9倍、9日約29.8倍。制度信用で6月に建てた買いは12月ごろに期限(建てた日ごとに異なる)
信用倍率の推移(信用買い残÷信用売り残)。出典:kabutore.biz「信用残の推移」の各基準日の値。倍率は比率のため株式分割の影響を受けない

 7〜9月にかけて整理が進んだものの、10月に入ってまた上がってきました。信用買いが多い状態で株価が下がると、含み損をかかえる人が増え、売りが出やすくなります。

年内に来る信用買いの「期限」

 信用取引には、返済期限が6カ月の「制度信用」と、証券会社が期限を決める「一般信用」(無期限のものが多い)があります。制度信用の返済期限は、建てた日から6カ月です(楽天証券、松井証券の説明)。キオクシアは制度信用銘柄で、2025年6月からは貸借銘柄にもなっています(キオクシアの適時開示)。

 そのため、6月の高値圏で制度信用の買いを建てた人は、12月ごろに期限を迎える計算になります。ただし、期限は建てた日ごとに違いますし、一般信用で期限のない人もいます。すべての信用買いが同じ時期に一斉に返済売りを出すわけではありません。

 期限が近づくと返済のための売りが出る可能性はありますが、実際にどれくらい出るかは、現時点では確認できていません。「期限までに手放したい」という売りが、反発したときの上値を抑える可能性がある、という程度に見ておくのがよさそうです。

 大株主の動きも需給に響いています。米ベインキャピタルは、2〜3月にかけて保有比率が3分の1を下回る水準まで段階的に売却を進め(日経)、7月には全保有株を売却したと幹部がブルームバーグに明らかにした、と報じられました。

会社の自社株買いは、すでに終わっている

 キオクシア自身も自社株買いをしていましたが、もう終わっています。7月31日に上限8,000億円(3,000万株、分割前)の枠を決め(自己株式の取得枠設定のお知らせ)、当初の取得期限は10月30日でしたが、8月10日付の適時開示で取得終了を発表しました。実際の取得期間は8月3〜10日のわずか6営業日で、取得株数は1,613万3,500株、取得総額は7,999億9,768万9,000円。取得総額が上限にほぼ達した水準で終了しています(キオクシア適時開示(2026年8月10日))。

 つまり、会社による買いの支えは、もうありません。今回の下げにどこまで響いたかは断定できませんが、「10月30日まで買いが続く」という前提では見ないよう注意が必要です。

買い時はいつか:日付ではなく「条件」で考える

 「何月何日が底」とは言えません。ただ、判断に使う材料は整理できます。

買い時の判断に使う節目。10月14〜15日米CPI・ASML・TSMC決算、10月30日キオクシア決算、11月3日米中間選挙、12月ごろ信用買いの返済期限、12月中旬マイクロン決算
買い時の判断に使う5つの節目

 株価の水準としては、1万5,000円台がひとつの目安で、割り込めば7月30日の安値(1万2,006円)が意識される、という見方があります。7月に同じ水準で下げ止まった例はありますが、今回も同じになるとは限りません。

 私の考えは次のとおりです。

  • 決算の前に全力で買うのは避けたい。 10月30日の結果しだいで、流れが大きく変わりうるからです。
  • 見るべきは「NAND価格が下がり始めたか」。 中国勢の報道より、実際の販売単価(来期の見通し)のほうが業績に直結します。

 こうした条件がそろって初めて「買い時」と言えるのでは、というのが私の見方です。逆に、決算で単価の伸びが鈍ったり、10〜12月の見通しが弱かったりすれば、まだ下を見る余地は残ります。

それでも今、入りたい人はどうする?

 「ここまで下がったし、今のうちに少しでも入っておきたい」と思う方は多いはずです。その気持ちは自然だと思います。そのうえで、入るなら次の点を先に決めておくと、慌てにくくなります(投資をすすめるものではありません)。

  • 失ってもいい金額を先に決める。 この銘柄は、6月の高値から7月30日の安値まで約68%下がりました。さらに下がる場面があっても生活に困らない、「なくなっても大丈夫」な範囲にとどめます。
  • 一度に入れず、予定額を分ける。 たとえば3回に分けて、「今回」「10月30日の決算後」「12月以降」と時期をずらす方法があります。底を当てにいくのではなく、タイミングの失敗を小さくする考え方です。
  • 現物で買う。 信用取引は返済期限があり、含み損が出ると追加の保証金が必要になることもあります。いま需給が重いのは、まさに信用買いの人たちの含み損が理由です。
  • 入る理由を一言で決めておく。 「安くなったから」だけだと、さらに下がったときに持ち続ける理由がなくなります。「AI向けのNAND需要は続くと見ているから」のように決めて、「販売単価が下がり始めたら見直す」という条件もセットにしておきます。
  • 1銘柄に偏らない。 1日で13%下がるような日の影響を、そのまま受けてしまうからです。

 「6割下がったから安い」とは限らないことは、PERのところで見たとおりです。一方で、「今の利益が続くなら割安に見える」のも事実なので、迷う気持ちはよく分かります。だからこそ、金額・時期・見直す条件の3つを決めてから入る、くらいが現実的だと私は思います。

よくある質問

CXMTの報道は、本当にキオクシアの業績に影響するの?

 今のところ分かりません。CXMTはDRAMが中心で、キオクシアの主力のNANDとは直接の競合ではありませんし、技術の裏付けも示されていません。影響が出るとすれば、中国勢の増産でメモリ全体の価格が下がる場合です。

決算が過去最高益なのに、なぜ株価が下がるの?

 株価は「これからの利益」を見て動くからです。4〜6月期の利益は市場予想を下回りましたし、メモリは市況に左右される業界なので、「今がピークでは」と警戒されやすい面もあります。

株式分割をしたのに、なぜ株価が安くなったの?

 10月1日に1株を3株に分割した(お知らせ)ので、株価の見かけは3分の1になっています。6月高値の11万2,700円は、調整後で3万7,567円です。

底値はいくら?

 言い切れません。目安は1万5,000円台で、割り込んだ場合は7月30日の安値1万2,006円が意識されています。ただ、決算や信用残の整理しだいで変わります。

まとめ

  • 10月13日の急落は、CXMT報道がきっかけとみられ、信用買いの多さと高値への警戒も重なった可能性がある。原因は1つに断定できない。
  • 業績は過去最高圏だが、市場予想には届かず、メモリは市況に左右される業界。筆者の単純年換算ではPERは約6倍と低いが、利益が続く前提。
  • 買い時は日付ではなく、10月30日の決算、信用買いの整理、12月ごろに期限を迎える信用買い、NAND価格の動きを見て判断する。それでも入るなら、金額・時期・見直す条件を先に決める。

更新履歴

  • 2026年10月13日:下落要因の表現を推測と事実に分けて見直し、PERの計算根拠、信用取引の返済期限の説明、決算短信など公式資料へのリンクを追記
  • 2026年10月13日:初版公開